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いま、人々は、
とりわけ弱い立場にある老人と少年少女は、
生き方を見失っている者が多い。
これから何をすればいいのか、展望が見いだせない。
けれども、人は人に出会い、
なにかを受け取り、与えあうことで、
小さな希望をつかむことはできる。
東京郊外を舞台にした、
近過去でも近未来でもあるような物語を通して、
そういう主題を訴えるとともに、
いままでの殻を破るような映画表現を追求し、
そのなかに人々を招くような「対話」を実現したい。

―― 福間健二 〈映画企画時のコメント〉
いま、人々は、とりわけ弱い立場にある老人と少年少女は、 生き方を見失っている者が多い。
これから何をすればいいのか、展望が見いだせない。
けれども、人は人に出会い、なにかを受け取り、与えあうことで、
小さな希望をつかむことはできる。
東京郊外を舞台にした、近過去でも近未来でもあるような物語を通して、
そういう主題を訴えるとともに、
いままでの殻を破るような映画表現を追求し、
そのなかに人々を招くような「対話」を実現したい。

―― 福間健二 〈映画企画時のコメント〉
INTRODUCTION & STORY
詩を生き、映画を生きた
福間健二の最新作
詩を生き、映画を生きた福間健二の最新作

長篇第一作『急にたどりついてしまう』(95)以降、常に既成概念にとらわれない自由で豊かな映画表現を探求してきた福間健二監督。最新作となる本作は、学校に行かない中学2年生の七海(ななみ)と、妻を亡くした元船乗りの77歳の老人、寺田との心の交流を描いています。七海を演じるのは幼い頃から舞台などに出演するも、今回が映画初出演となるくるみ。そして、老人寺田役は、なんと福間監督自身が演じています。10代の頃より若松プロに出入りしていた福間健二は、20歳で若松孝二監督『通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇』(69)の脚本を書き主演します。同時に詩人としてのキャリアを築きながら、『石井輝男映画魂』(92)、『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』(96)などを刊行。常に映画と詩の新しい局面を追求してきました。そして、第七作目となる本作を完成させた直後、脳梗塞で倒れ、療養中に肺炎を起こして本年4月26日に74歳で亡くなりました。
『きのう生まれたわけじゃない』は、福間健二が最後に遺した、この世界への希望の贈りものなのです。

これから生きる時間と
これまで生きてきた時間。
二つの人生が交差するとき、
止まった時間がふたたび動きはじめる。
これから生きる時間とこれまで生きてきた時間。
二つの人生が交差するとき、
止まった時間がふたたび動きはじめる。

母と二人暮らしの七海は中学2年生。七海という名前をつけてくれた父は、ずっと前にどこかに行ってしまった。今日も学校には行かない。川べりで「夫を亡くしたばかりの人」岬と出会い、心が通じあう。77歳の寺田は、若いころに妻を亡くした元船乗り。老年にさしかかって、忘れていいわけではない過去が、不意に彼を不安にかき立てる。最近、老人たちが集まって飲み食いする「憩いのベンチ」に参加するようになった。そこにやってきた七海は、老人たちのありきたりの言葉に「きのう生まれたわけじゃないよ!」と反発する。七海は寺田とともに「憩いのベンチ」を抜け出して、二人の時間を持つことになった。寺田は、人の心を読むことができる七海におどろく。その夜寺田の前に、亡くなった妻綾子が現れる。

CAST
くるみ
くるみ
七海 役
2006年東京都生まれ。幼いころより演出家である父親の舞台に一緒に出るようになる。『教室』(13)、『コルバトントリ、』(15)、『を待ちながら』(17)、『キス』(21)などがある。今回の映画は初めての外部出演となる。また絵が好きで「イッツ・ア・スモールスモールワールド」という小さな展示の経験もあり。この先、何をやっていくのか模索中の日々。
正木佐和
正木佐和 まさき・さわ
岬/綾子 役
1974年大阪府生まれ。近年は、昭和の庶民的な母~現代のセレブ階級母まで、主人公やヒロインの母役が多い。主な出演作品として『UNDERWATER LOVE-おんなの河童-』(11/いまおかしんじ 主演・米映画祭最優秀主演女優賞受賞)、『秋の理由』(16/福間健二 横山役)、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(21/江口カン 母・佐羽涼子役)、ケツメイシMV「ライフイズビューティフル」(22/ウスイヒロシ 母・百合子役)などがある。
正木佐和
安部智凛
安部智凛 あべ・ともり
ミオ 役
1982年東京都生まれ。映画出演作品に『フラガール』(06/李相日)、『実録連合赤軍〜あさま山荘への道程(みち)〜』(08/若松孝二)、『キャタピラー』(10/若松孝二)、『千年の愉楽』(13/若松孝二)、『秋の理由』(16/福間健二)ほか。『ラーメンガール』(08/ロバート・アラン・アッカーマン/アメリカ)、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」、大河ドラマ「青天を衝け」などがある。
守屋文雄
守屋文雄 もりや・ふみお
守屋次郎 役
1976年宮城県生まれ。監督作に『まんが島』(17)、『すずしい木陰』(19)、『almost people』(23/オムニバス映画)。脚本作に『UNDERWATER LOVE -おんなの河童-』(11/いまおかしんじ)、『キツツキと雨』(12/沖田修一)など。出演作『恋の豚』(18/城定秀夫)で、第31回ピンク大賞・男優賞受賞。近年の出演に『白鍵と黒鍵の間に』(23/冨永昌敬)、『つゆのあとさき』(23/山嵜晋平)など。本作では脚本協力と監督補も担当した。
守屋文雄
蕪木虎太郎
蕪木虎太郎 かぶらぎ・こたろう
宮城雅人 役
2004年東京都生まれ。主な出演作に、映画『受け入れて』(20/貴田明日香)、舞台『千夜一夜ものがたり』(23/久米伸明)、MVランプス「死神と罠」(21)などがある。小学5年生から年に2、3回舞台に立ち、現在は桐朋学園芸術短期大学演劇科。特技は歌と殺陣。
STAFF
福間健二
福間健二 ふくま・けんじ
原案・脚本・監督・出演〈寺田 役〉

1949年新潟県生まれ。詩人、映画監督。批評と翻訳もおこなってきた。

中学時代から映画を見はじめる。とくにゴダール、増村保造、大島渚、若松孝二、鈴木清順などの映画に夢中になった。高校3年のとき、若松孝二、大和屋竺、足立正生らに出会う。1969年、若松孝二監督『通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇』に脚本・主演。都立大学在学中に16ミリ映画『青春伝説序論』を高間賢治の撮影で監督する。同時に詩を書きはじめ、現代イギリス詩の研究者としての道を歩みながら、詩と映画への情熱を燃やしつづけた。

79年から5年間、岡山大学教養部講師。83年、私家版の詩集『最後の授業/カントリー・ライフ』、88年、詩集『急にたどりついてしまう』を出す。89年、詩と映画をメインとする雑誌「ジライヤ」を創刊する。このころから詩が大きな注目をあびるようになり、映画批評と翻訳でも活躍する。95年、サトウトシキ監督の『悶絶本番 ぶちこむ』の脚本を立花信次名義で書き、同年、長編劇映画第1作『急にたどりついてしまう』を発表する。その後、映画制作からしばらく遠ざかるが、『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』をはじめとする映画批評や、勤務した首都大学大学東京表象分野での研究教育活動をとおして、映画との新しい関係、映画へのヴィジョンを模索していった。

2008年以降、『岡山の娘』(08)、『わたしたちの夏』(11)、『あるいは佐々木ユキ』(13)、『秋の理由』(16)、『パラダイス・ロスト』(20)を継続して発表し、若い世代の映画作家・批評家から熱い支持を受け、ファン層を広げてきた。

詩集に『沈黙と刺青』(71)、『冬の戒律』(71)、『鬼になるまで』(71)、『結婚入門』(89)、『地上のぬくもり』(90)、『行儀のわるいミス・ブラウン』(91)、『きみたちは美人だ』(92)、『旧世界』(94)、現代詩文庫『福間健二詩集』(99)、『秋の理由』(00)、『侵入し、通過してゆく』(05)、『青い家』(11、萩原朔太郎賞と藤村記念歴程賞をW受賞)、『あと少しだけ』(15)、『会いたい人』(16)、『休息のとり方』(20)などがある。 評論集に『詩は生きている』(05)、『佐藤泰志 そこに彼はいた』(14)、『迷路と青空』。映画関係の本に、『石井輝男映画魂』(92、石井輝男共著)、『大ヤクザ映画読本』(93、山﨑幹夫共編著)、『ピンク・ヌーヴェルヴァーグ』(96)など。翻訳に『カリガリ博士の子どもたち』(83、藤井寛共訳)、『東京日記』(92)、『ビリー・ザ・キッド全仕事』(94)、『ライオンの皮をまとって』(06)などがある。

2023年4月26日、肺炎により死去。享年74歳。

福間健二
山本龍 やまもと・りゅうじ
撮影・照明
1983年高知県生まれ。日本映画学校演出科で学んだ後、フリーの撮影助手としてCM・MVを中心に活動。2019年にカメラマンとして独立し、CM・WebCMを中心に活動。本作では、知己だった福間監督にオファーされて、初めてとなる劇映画に挑戦した。
川上拓也 かわかみ・たくや
録音・編集
1984年北海道生まれ。映画美学校修了後、フリーの録音・編集として活動。録音担当作に『風の波紋』(16/小林茂)、『パラダイス・ロスト』(20/福間健二)、『マイ・ラブ:日本篇 絹子と春平』(21/戸田ひかる)、『百年と希望』(22/西原孝至)、『重力の光:祈りの記録篇』(22/石原海)、『はだかのゆめ』(22/甫木元空)など。整音担当作に『息の跡』(16/小森はるか)、『帆花』(21/國友勇吾)、『日本原 牛と人の大地』(22/黒部俊介)、『二十歳の息子』(22/島田隆一)など。編集担当作に『台湾萬歳』(17/酒井充子)、『アイヌ・ネノアン・アイヌ』(21/ラウラ・リヴェラーニ&空音央)などがある。
ゑでぃまぁこん
エンディングテーマ「皇帝の海」ほか
姫路在住の2人、ゑでゐ鼓雨磨(えでぃ・こうま/ガットギターと歌)と柔流まぁこん(じゅうる・まぁこん/ベース)により2001年頃結成。現在はバンド編成でも活動中。日本語の歌を中心としたサイケデリックフォークポップバンド。これまでに6枚のアルバム、4枚の7inch、1枚の10inch、2枚の12inch レコード、多数のCD-R作品など制作。自身のレーベルpong-kong recordsから、2022年に2枚の7インチ『ひまわり絶叫/明るい未来を』赤盤シングルと、『いつのまにかわたしたち/帰り道』クリア盤シングルを発売。日本でのライブ活動のほか、スコットランドやミュンヘンのフェスティバルでライブを行なった。亡くなったダンサー室野井洋子さんとの縁で福間監督に出会い、本作への音楽をオファーされた。
CREDIT
きのう生まれたわけじゃない
2023年|86分|1:1.85|5.1ch|DCP

出演|くるみ 福間健二 正木佐和 安部智凛 守屋文雄 蕪木虎太郎
住本尚子 谷川俊之 黒田武士 高平よしあき 常本琢招 保志実都貴
西山慧 柴山葉平 村上僚 今泉浩一 小原早織 町屋良平 伊藤洋三郎
原案・脚本・監督|福間健二  プロデューサー|福間惠子
撮影・照明|山本龍  録音・編集|川上拓也  美術|住本尚子
音楽|福間健二  ヘアメイク|浅野加奈  スタイリスト|原早織  スタイリスト助手|井藤まりな
脚本協力・監督補|守屋文雄  助監督|厨子翔平 大城義弘  制作|西村済 岩佐浩樹
スチール|山本龍 松本桂 内田左京  原案協力|小林良二 高田亮
  タイトル文字|山崎葉太  宣伝美術|則武弥  エンディングテーマ|ゑでぃまぁこん

製作|tough mama  配給・宣伝|ブライトホース・フィルム  関西宣伝|松村厚

文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
出演|くるみ 福間健二 正木佐和 安部智凛 守屋文雄 蕪木虎太郎
住本尚子 谷川俊之 黒田武士 高平よしあき 常本琢招 保志実都貴
西山慧 柴山葉平 村上僚 今泉浩一 小原早織 町屋良平 伊藤洋三郎
原案・脚本・監督|福間健二  プロデューサー|福間惠子
撮影・照明|山本龍  録音・編集|川上拓也
美術|住本尚子  音楽|福間健二
ヘアメイク|浅野加奈
スタイリスト|原早織  スタイリスト助手|井藤まりな
脚本協力・監督補|守屋文雄  助監督|厨子翔平 大城義弘
制作|西村済 岩佐浩樹
スチール|山本龍 松本桂 内田左京  原案協力|小林良二 高田亮
  タイトル文字|山崎葉太  宣伝美術|則武弥
エンディングテーマ|ゑでぃまぁこん

製作|tough mama
配給・宣伝|ブライトホース・フィルム  関西宣伝|松村厚

文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
THEATER
都市 劇場名 公開日
関東
東京 ポレポレ東中野 2023/11/11(土)-